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またねー、とクダリが最後の乗客に笑顔を手を振って見送っていた。
「お疲れ様です、本日も終わりましたね」
「うん、眠いから早く帰ろ」
時計を見ればもう日付が変わってから時計が一周と少し。クダリが眠い、と言うのも分からないでは無い。
今日は何時もよりも全体的に乗客が多く、時間が遅くなってしまった。
他の鉄道員達も先程挨拶をして別れたばかりである。
時計から目をクダリに移せばいかにも眠そうで隣で小さく欠伸をしていた。
「そうですね、早く帰るとしましょう。
…後眠いのは分かりますが足元にはちゃんと注意して下さいまし」
半分夢現状態なのかクダリの身体がたまにがくん、と傾く。
見ているこっちは危なかっしくて仕方が無く、転ばないかハラハラする。
見かねた私がそう注意するとこくりと頷いて眠そうな目を擦っていた。
「今日は久しぶりに楽しかった」
暫くすると少し眠気が引いたのかクダリがそう言った。楽しかったと言う事は中々手応えがあったのだろう。
勝てたけど危なかった、と言う次いで紡がれた彼の台詞からも其の挑戦者が中々の実力者だと言う事が伺える。
残念ながら今日――日付的には昨日は私の方にはそんな方は居なかった為に若干羨ましく感じる。
「もしかして先刻見送った方ですか?」
ふと先程のクダリの笑顔を思い出してそう尋ねると思った通りに頷いて肯定した。
「明日はシングルに挑戦するって言ってたよ」
「それはそれは。楽しみです。」
軽く微笑を浮かべそう返しながらも先程去って行った少年を思い出す。どんなトレーナーなのだろう。楽しみ、と言うのは心底からの本音である。
そんな会話をしていると眼前には自宅。
鍵を開けるとクダリは直ぐに寝室へと飛び込み、余程疲れて居たのだろう、そのまま着替えもしないで小さく寝息を立てて寝てしまった。
そんなもう夢の中であろうクダリを見ながら微笑しおやすみなさい、とだけ呟けば私も自分の寝室へと向かった。
【次発まで暫しご機嫌よう】
(明日もご乗車お待ちしております)
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