鞭打ち人への道

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     歓談もほどほどに、私はさっそく本題を切り出した。計画の全容を(計画の全容というほど大それたものではないが)説明し、それが終わるとすぐさま掛け金などについての話を性急に進めた。  そしてそれらが一段落するなり、私はそこで堅苦しい会話を打ちきった。今日はまず、お近づきのしるしに女を世話する算段を立てていた為だ。  私は彼らを事前に手配しておいた別室に移動させた。手はじめに女をあてがっておいて揺さぶりをかける。そのほうがよっぽど気がきいている。彼らには一時間半か二時間ほど私の世話した女と枕を交わしてもらい、事が済んだ後でまた元の座敷へと戻ってきてもらう。そういう計画だった。  三人とも妙に心得たもので、私が皆まで言わずとも、別室をあてがわれた時点ですでに事の成り行きを飲み込んでいた。こういう展開には慣れっこなのだろう。  そして二時間後、彼らは一様にさっぱりした表情で閨室から凱旋してきた。戻ってくるなり、彼らは自らに使役した娼婦の技芸を喜悦満面の態で寸評し合った。その後、再び四人で宴席を囲み、あらためて杯を交わし、最後に株の件について二・三詰めた後、酒宴は盛況のうちに幕を閉じた。  彼らが席を立つ間際を見計らい、私は予定通り彼らに金子を握らせた。すぐにそれと分からぬよう袖の下を仕込んでおいた菓子折の箱を手土産として持たせたのだ。株の利権と実弾の合わせ技。  彼らが満足に達するだけの安っぽいインサイダーなど、私にしてみれば二つや三つ常時抱えている。この袖の下にしても、はっきり言って私だからひねり出せた額だ。まさに株の名手の面目躍如。余人ならいざ知らず、私にとってはさして手痛い出費でもない。普通自動車が一台買えるかどうかという程度のはした金に過ぎない。
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