東方賭博遊戯

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 ミスティアの言われた通りに、森の道をひたすら進む。屋台の車輪の跡が残っているから、道に迷うことはなさそうだ。 「歩いてみれば……やっぱり広いわねここは」 「そりゃそうだよ。大抵の妖怪はここら辺に住んでるんだから」  リグルの言う通り、人間と交流する者、特定の土地柄を好むごく一部を除いては、大抵の妖怪はこの森を巣としている。  いわばここは、妖怪の街と言ってもいいだろう。 「で、相変わらず何にもいないんだけど? また移動したとかじゃないわよね? それとも鳥の記憶違い?」 「少なくとも、後者は違うんじゃないかな。この先には確かに、日当たりのいい場所があるよ。蝶やバッタが集まるから、よく知ってる」 「その言葉を、信じていいのかしらね……」  悪態をつきながらも、今はミスティアとリグルを信じるしかない。  それから数分……いい加減歩き飽きた頃になってようやく……陽の光が強くなってきた。 「長いようで、短かったわね」  思いの外、目的は早く達成されそうだ。  当然だ。これはいつぞやの紅い月の異変でも、春が来ない異変でも何でもない。  ただの霊夢の暇潰しだ。 「……ん、おや……こんな森なのに、人通りは多いみたいだねえ」  そこは、そこだけ、森の葉の天井に穴が空いた場所だった。日の光が差し込む部分に限り、まるで避けるように樹が生えていない。ただ雑草が敷き詰められているだけである。  そんな森で、一人昼寝から目覚めた少女は、新たな来訪者を歓迎するように、寝ぼけ眼で微笑んだ。 「そういう日もあるってだけ。今日はいつもと違うのよ、朝っぱらから」 「なるほどなるほど、そいつは愉快だねえ」  むすっとした態度の霊夢に首を傾げながらも、首に賽子の飾りを下げたその少女は愉快そうに微笑むのみ。  そして彼女の側には、いくつかの戦利品と思われる品があった。  氷漬けの蛙に、壺に詰められた鰻、大量の本に、紙袋に詰められた紅茶の葉、キュウリ。 (誰が負けたか一目で分かる品々ね。それにしても……)  呆れ顔でそれらを眺めながら、霊夢は呟いた。 「随分とまあ、節操のないことね」
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