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「あ、さっきの変なの! あたいの宝物返せ!」
「変なのとは失敬だねえ。勝ったら貰う、負けたらあげる。当たり前のことじゃないか」
思い出したように怒るチルノに目を丸くしながらも、少女は落ち着いた様子で欠伸をする。
「まあ、それは真理ね」
「その真理は巫女としてどうなのかなあ……」
納得する霊夢に、リグルは溜息を吐くしかない。
「へえ、あなた巫女なんだ。私は凹山凸子(おうやま とつこ)。見ての通り、賭博師なんだ」
「いや、どこをどう見て賭博師と判断したらいいのかわかんないんだけど」
凸子と名乗る少女は、どうやら霊夢に興味をもったのか、起き上がる。余裕のある態度に霊夢は少しむっとするが、名乗られたなら名乗るのが、礼だ。
「博麗霊夢。誰もが知る博麗の巫女とは、私のことよ!」
何故か自信満々に胸を張る霊夢を見て、凸子はくすくすと笑い声を漏らした。
「な、何がおかしいのよ!」
「ああ、いやいやごめんねえ……今日はつくづく、運がいいなあって」
「運?」
不審の目を向ける霊夢に対し、凸子は満足げに笑みを浮かべる。
「あっちの世界じゃ、こんなに生き生きした人はいなかったからねえ……しかも、みんな勝負を受けてくれる……一か八かで、この世界に迷い込んでみて正解だった」
「あなた……外来人?」
「なんだいそりゃ?」
外来人……幻想郷の外の世界から、結界を破り、または妖怪、八雲紫の気まぐれにより渡ってきた存在。どうやら彼女はそうらしい。
「あんたみたいな、幻想郷の外から来た奴をそう言うのよ」
「へえ、幻想郷っていうんだここ……いい世界ね」
凸子は愉快気だが、霊夢はそうはいかない。外からの存在は大抵、幻想郷になんらかの波風を立てるものなのだ。彼女の存在そのものが、後の異変に繋がる可能性はある。
「結界に変化は感じられなかった……てことは、送り込んだのは紫?」
「いや、だから何それ?」
霊夢の並べる単語は、どうやらどれも凸子の知るものではないらしい。
「私は、ただ勝っただけだよ。賭けに勝ったから、この世界に踏み入ることが出来た」
どうやらこの巫女は、どうやってこの世界に来たのかを知りたいらしい。それを理解した凸子は、静かに目を細めた。
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