39人が本棚に入れています
本棚に追加
「賭けに勝った……どういうこと?」
いまいち掴めない。この少女のキャラも掴めない。それに苛立つ霊夢の反応を、どうやら凸子は楽しんでいるらしい。それもまた気に食わない。
「ああ、説明が必要だね。こいつは失礼」
ぽりぽりと頭を掻きながら、彼女は懐から何かを取り出した。
それはなんの変哲もない、立方体の物体。それは、賽子だった。
「空からカレーパンが降って来たらいいな~」
その賽子を宙に放り、突拍子も無いことを彼女は呟く。
「唐突に何言ってんの。降って来るわけないじゃない」
「……ところがぎっちょん」
パシッと賽子を掴み、彼女はにんまりと笑った。
バフッ
「いっ!?」
突如、霊夢の頭に何かが落ちた。痛くは無いが、突然の事に、彼女は目を丸くする。
「どうやら私に会いに来てくれたみたいだから、それはサービス」
霊夢の頭に当たり、足元に落ちた物……それは、袋に包まれたカレーパンだった。
「あ、あんた今何したのよ!」
袋を破り、カレーパンを頬張りながらも、霊夢は尋問する。
(食べるんかい……)
リグルはもはや突っ込まない。
「だから言ったでしょ? 賭けですよ、賭け」
賽子を見つめながら、凸子は説明する。
「私にはちょっとした力があってね。確率を操ることが出来るんですよ。例えば、瀕死の人が蘇生する確率、おみくじで大吉を引く確率、カレーパンが降ってくる確率、それに……貴女の言う外の世界から、私がこの幻想郷に来る確率」
「!」
「あらゆる不可能も、あらゆる確実も……私は50パーセントにすることが出来るの。一回の望みにつき、一度きりだけだけど」
彼女に自慢げな様子は見えない。もとより自分の能力をひけらかすつもりは無いらしい。
恐らく、凸子は自分を理解してもらうために、能力を見せた。それだけ、自分に食いついて来る霊夢を気に入り、彼女を知りたくなったのだろう。
「……危険ね、あなた」
しかしその行為は、霊夢には逆効果だった。
幾度に渡る異変解決の経験が、霊夢を一つの結論に導いたのだ。
すなわち、凸子の能力が、危険なものだと。
最初のコメントを投稿しよう!