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「悪いね。チルノがなんか暴走しちゃってさ」
未だにぐずっているチルノに代わり謝ったのは、後を追ってきた妖蟲。闇に蠢く光の蟲。リグルであった。
「で……なんでチルノが泣きながら私に特攻仕掛けてきたのかしら? どうせまた弾幕勝負か何かで負けたんでしょ?」
「えーと……負けたには負けたんだけど」
なんだがはっきりしない。
「……何よ?」
「その、弾幕勝負じゃなくて……」
「じゃなくて?」
「…………ババ抜き」
しばしの沈黙が流れる。
「……リグル」
「な、なに?」
「そこの氷精ボコっていい?」
当然の反応だ。
「ま、待ってよ! 負けただけじゃないんだよ? 負けたからって、宝物を奪われたんだよ」
「宝物?」
実に興味深い響きだ。霊夢の瞳がうっすら輝く。
「うん、氷漬けにしたでっかい蛙」
……沈黙。
「よし分かった。二人揃って退治されたいってわけね?」
「ち、違うから! いや、違くないけどそうじゃなくて! なんか変な子が急に勝負挑んできたんだよ!」
「変な子……?」
一瞬、霊夢は妙な胸騒ぎを覚えた。
「う、うん……最初は弾幕勝負だと思ったんだけど、ゲームしようって言い出して……勝ったら大事な物を一つ増やしてあげるって」
(増やす……?)
その言葉に違和感を覚えるが、考えてみても分からない。何はともあれ、チルノはその勝負を受け、そして負けたのだろう。
「で、負けて逆に一つ持ってかれたと」
「いや、元々その子が持ってこうとしたのは半分」
「半分?」
「それに怒ったチルノが弾幕勝負挑んで……また負けて、完全に持ってかれたってわけ」
「……なんか典型的な負け賭博って感じねそれ」
しかし、見えてこない。どうやら犯人は、チルノの宝物が別に欲しかったというわけでもないらしい。
では何故、チルノに勝負を挑んだのか……?
「リグル、あんた見てたんでしょ? なんかその二勝負、おかしなとこなかった?」
「おかしなとこ……?」
頭をぽりぽり掻きながら、リグルはうーんと唸り、そして思いついたように口を開いた。
「そういや、互角だったね」
「互角?」
「うん……二人でしかババ抜きやってなかったのに、なかなか終わらなかったんだ。ずーっとジョーカーが行ったり来たりでさ。三十往復以上してたね」
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