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「なんでもぶらぶらしてるらしいから、今はもう湖にはいないかも。人里から来たって言ってたから……」
「となると一番近いのは……妖怪の森ね」
「あんな奴、次見つけたらカッチコチにしてやる! リベンジだリベンジ!」
意気込むチルノをよそに、霊夢は妖怪の森を目指し飛んでいた。
(あら、あれは……)
遥か先に、黒い人影が横切っていく。箒に跨がったそのシルエットは、よく見知った顔だ。
「魔理沙ね、また図書館から本盗んできたのかしら?」
普通の魔法使い、霧雨魔理沙。神社にはよく来る人間の一人だ。茶菓子をくすねに来るか、新しく手に入れたマジックアイテムを見せびらかしに来る程度ではあるが、悪人ではない、多分。
朝っぱらからよく働くものだ。もっとも、泥棒は本来夜に働くものだが、紅魔館の住人は夜行性、または夜型が多い。ある意味正しいと言えよう。
「白黒は働き者だねえ、うちの蛍達にも見習ってほしいね」
それを横目に、リグルが苦笑する。
(蛍って怠け者だったの……?)
疑問に思う霊夢だったが、それよりも気になる疑問が一つあった。
魔理沙が箒にぶら下げている袋。本日の「釣果」、と言ったところだろうが、いつもよりも袋が膨らんでいない。
普段ならば、数冊こぼれ落ちる程にパンパンに膨らんだ袋を重たそうにふらふらと引き下げて飛んでいるのだが……遠めからで判断出来ないが、表情も何気に不機嫌のように思える。
「どした? 霊夢?」
「ん? いや、なんでもないわ。いきましょ」
チルノに顔を覗かれ、霊夢はふと我に帰る。
大方パチュリーか咲夜に見つかり邪魔されたか、帰る際に袋を破られでもしたのだろう。
魔理沙は興味があることに関しては、霊夢以上にまめな人間だ。それゆえに、決めた習慣は半分癖となる。自然と、彼女の犯行時刻は似た時間帯になる。これでは泥棒としては半人前だ。
「さて、見えてきたよ」
緑の色が強まってくる。太陽光に反射する葉の輝きが少し眩しい。
少し目を細めながら、三人は森へと降りて行った。
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