終末の序章

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蝉の声を聞くと、今が夏だという事実がまざまざと思い起こされ、暑くてたまらない。 9月とはいえ、蝉は憎たらしい程元気に鳴いている。 カーネルサンダースを若くしたかのような風貌の鈴木は、ハンカチでとめどなく流れる額の汗を拭い、取引先であるSI電気に入った。 自動ドアが開いた瞬間、冷気が鈴木の火照った体を包んだ。 取引は面倒であったが、冷気の誘惑に、いそいそと奥へ進んだ。 一年前に15万で買った壁掛けテレビが、今や7万で売られていて、なんだか損した気分になる。
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