殺人鬼1

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「やっぱり俺の作るスープは最高だな!」 殺人鬼、零崎是識(ぜろざき これしき)。 彼は銀色に光る業務用鍋で出汁を煮込んでいた。 頭に紺色の手拭いを巻き、青色のTシャツに大量生産されたジーンズ。 さらに厚手のゴムエプロンと長靴を身に付け、いかにも「仕事だ!」という気合の入った格好。 零崎是識は殺し名序列第三位の「零崎一賊」と呼ばれる集団に属している。 二つ名、と呼ばれる通称があり周囲には「四捨五入」(ラウンド オフ)と認知されていた。 趣味 人間観察。 性癖 耳フェチ。 得物に二つ名と同名の中華包丁を所有している。 普段、彼はラーメン屋を経営している。 それはチェーン店でもなければ今流行の家系ラーメンでもない、彼が独学で一から作り上げたものだ。 彼のこだわりの味は確かなもので、メディア露出がないにも関わらず店はなかなかに繁盛していた。 昼、十一時。 調理場の中で麺を一人前の塊に区分し、具材を取りやすい位置に配置する。 研究に研究を重ねた自慢のチャーシューをいつでもスライス出来るようにまな板の隣にブロックで置く。 「さあ!今日も働くぞ!」 およそ人殺しとは思えぬ精気に満ち溢れた開店準備であった。
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