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一九二〇年、一二月六日。
この日に彼女は……ロザリア・ロンバルドは死んだ。
ロザリア・ロンバルド。
腐敗しない死少女、世界で最も美しい死体。
ロザリアは今現在もイタリアのとある教会で眠り続けているという。
いつか彼女と直接会ってみたいと僕は常々考えていた。
僕にとって十二月六日は特別な日だ。
妹の誕生日を忘れることはあっても、ロザリアの命日が僕の脳細胞から忘却されることはないだろう。
だから僕はこの日に特別な用事を入れていた。
友人と、ある場所に記念撮影に行くという用事。
半年も前から遠足を控えた幼児のように待ち焦がれていた、「もしも」の時の為に周到な準備もしてきた。
なのに……なぜ僕はこんな所にいるのだろう?
目の前に器が置かれていた。
錆色の熱々とした液体が満たされていて、所々に油分の膜が浮いているのが分かる。
中身はそれだけではなかった。
小麦をひも状に伸ばしたもの、豚の屍骸をトロトロになるまで煮込んだもの、魚肉を磨り潰し着色料を加え渦巻状にしたもの、それらが均等に配置されている。
この器の中にどれだけの『死』が詰まっているのだろう?
僕は厳粛な気持ちで箸をのばした。
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