序章

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 永い時を経て風化し崩れかけた巨大な石造りのこの地下遺跡に天井の石壁の間を通り地上からの僅かな日の光が弱々しく中を照らす。  広い部屋の一室でその光に照らされる石壁には遥か昔にこの地下遺跡を造り上げた人々が描いたであろう壁画が壁一面にあり所々が崩れまたは掠れて良く見ることが出来なくなっていた。 「これで私に課せられた役目も終わりだな…」  何かが置かれていたであろう人の背丈ほどある石造りの台座の近くで、達成感と喪失感が入り交じったような表情で感慨深くそう呟くのは中年に近い年齢の彫りの深い顔立ちをした前髪が長めの男。鍛えあげられた逞しい両腕に入れ墨のような紋様があり指先の出るグローブを付けている。 「だったら早いとこ、こんな陰気くせぇ場所から出ようぜ」  そう返事を返すのはもう一人の男より若い剣山のように髪を逆立てた目付きの鋭い男。ボロボロのコートを腰のベルトでとめて左右のホルダーに短剣をさしている。
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