序章

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 落ち着いた声でグライスに問いかける少年は、気品が感じられる大人びた雰囲気を纏い優雅な足取りで二人に歩み寄る。  肩の下まであるサラサラした長い髪を後ろでひとつに束ね、少女のように色白で強い意志の宿った瞳が印象的な綺麗な顔だちに微笑を浮かべている。 「人に名を聞くときは自分から名乗りやがれっ」  こいつは只者じゃねえ、それに姿は見えねぇが他にも何人か潜んでいる気配がしやがる・・・。  カイルは元々鋭い目をさらに鋭く尖らせ、威圧的に威嚇するように下から睨み付ける。  威嚇するカイルとは別にグライスは冷静に回りの気配に気を配りながら相手を観察し、とある一点で視線を止めた。  あの全身を隠すように包み込んだマントを右胸で止めている留め具の表面にあるのは帝国の、しかも王家の紋章か。  思案する二人に対し微笑を解き少しあきれた表情で足を止める。 「やれやれ、あなたに聞いたつもりは無いんですがね。それにグライス殿は私が何者か気付いているみたいですが一応名乗りましょう。」
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