序章

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 もう一人は床を蹴り砂埃を巻き上げて、下からナイフで箱を持つ右腕に斬りかかる。  カイルは黒装束を身に纏い顔を隠すように巻いた布からギラ付いた目だけを出した黒い人影が飛び出した瞬間に腰のホルダーから二本の短剣を抜いた。  上からグライスに迫る者に向かいその場で交互に交差するように一度だけ短剣を振るう。すると、短剣の柄にある紋様が僅かに光り十字型の真空波が発生し相手のナイフを持つ腕に襲いかかり血飛沫が舞う。  下から迫る黒装束の者が距離を詰める中、天井から漏れる僅かな光が吸い込まれるようにしてグライスの両手に集まりうっすらと光を放つ。  右腕に迫るナイフに対して箱を持つ光を放つ右手の甲を素早く向けると瞬間的に一層光を放ち、――ガキンという音と共にナイフが弾かれ地面を滑りセイリンが立っている脇に落ちる。  グライスはナイフを弾かれ動きの止まった相手の鳩尾に下から突き上げるように右膝を叩き込む。  ――ぐぇ、とうめき声を上げる顔面に間髪入れず残った左手の拳で殴り付ける瞬間、右手同様に光が輝きを増して炸裂する。
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