異世界

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「つまりコータさんは言語と名前以外は、全て忘れてしまったんですね?」 「あ、ああ」 「じゃあまずはセイレンカの歴史について、もう一度学んでみましょうか」 記憶喪失と答えたのは、あながち間違いじゃなかったな。 おかげで、この世界について自然な流れで訊くことが出来そうだ。 さすが俺! 「あ、セイレンカって分かります?」 「この世界の名前だろ?」 それくらいはニュアンスで何となく分かる。 だがテティはきょとんとした顔をすると、急に笑いだした。 「なんだよ…」 「だって世界に名前なんてありませんよっ。セイレンカというのはこの星の名前です」 あれ、そうなのか? そういや、俺のいた世界にも名前なんてないな。 「えっと、じゃセイレンカの誕生から説明しますね」 テティは一冊の分厚い本を取り出すと、気の遠くなるような話をし始める。 俺は眠ってしまいそうなのを耐えて、なんとか耳を傾けた。
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