人間

3/7
前へ
/70ページ
次へ
とりあえずこの兎は無視するに限るな。 軽率にちょっかいを出すと、こっちがカウンターを食らう。 そう判断した俺は、兎を置いて歩き出した。 だが、不吉な臭いが敏感になった鼻を掠めたため、また歩みを止める。 「…どうしたんですか?」 「いや、なんか焦げ臭くないか?」 そう、不吉な臭いとは何かが焦げたような臭いだった。 「あ、本当ですね。誰かが料理に失敗したのかなあ」 俺は真っ先に山火事を想像したので、そういう発想もあるのかと妙に感心した。 「そうだといいな」 料理にしては強烈な気がするが、悲観的になってもしょうがない。 今はこいつの楽観的思考を信じるとしよう。 しかし、俺達2人の予想はどちらも外れていたと、存外すぐに知ることになる。 ピィィ─────ッ! それも、悪い意味で、だ。
/70ページ

最初のコメントを投稿しよう!

39人が本棚に入れています
本棚に追加