「強引」

74/120
前へ
/714ページ
次へ
手が前髪から滑るように後頭部に移動して、引き寄せられた。 感じる予感に、両手を前に出す。 「っあ……」 その手を大きな片手で封じられ、近づく顔は微笑を浮かべている。 「っ!……ん……」 唇が重なる。 「緋芽?起きたのか?」 漏らした声は、綿貫くんにまで聞こえてしまったらしい。 こんなところを見られたら……。 やめさせようと思っても、力が足りない。 「は……、ふぁ……っ」 酸素が足りない。 唇と唇が触れ合う音が、脳みそに直接繋がっているみたい。 「緋芽?」 綿貫くんには、聞こえないのだろうか。 「……寝言か」 こんな熱く、甘美な寝言なんて、知らない。
/714ページ

最初のコメントを投稿しよう!

107164人が本棚に入れています
本棚に追加