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「大抵の男」って、それは誰のことを言ってるの?
まさか……
「なんで……、久我のことばっかり見てんだよ」
やめて。
その先は……。
抱き締められる力が強くなる。
転んで打った箇所が今さら痛む。
「だから、お前ムカつくんだよ」
この暴言は、真実じゃないと感じた。
言葉の裏側を見てしまった気がした。
再び始まった靴音と共に、シルエットが薄くなる。
扉が開いて、保健室がシーンと静まり返る。
決定的な単語を言われたわけじゃない。
いつもと同じくらい、聞き慣れない嫌な日本語を聞いた。
……なのに。
「…………」
「…………」
抱き合った格好が解けない。
「あの……、真幸くん、行った……よ?」
「――え、……あ」
真幸くんは、ハッと気付いたように、あたしの体を離した。
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