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紙都は団扇を放り投げると、汗が滴り落ちるのも気にせずキーを打った。
「ヌカヅキ
8月21日 14:38
―――――――
もっと詳しく教えて」
「サヤ
8月21日 14:40
―――――――
うーん、実際に見たわけじゃないから、それ以外はわかんないな~」
「ヌカヅキ
8月21日 14:41
―――――――
ありがとう。その情報だけで何かわかる妖怪いないかな?」
「サヤ
8月21日 14:42
―――――――
ごめん、思いつかないや(>_<)」
「あー、そっかぁ」
そう言いながらも一方でそうだろうなと納得していた。これだけの情報でわかるやつがいれば、よほど妖怪に詳しいかそれとも。
「……まあ、それはないな! お、また書き込みがある!」
新しい書き込みは別人物からだった。
「通りすがりの妖怪
8月21日 14:50
―――――――
そのへこみってどんな感じなんでしょう? 一つなのか二つなのかとか、何か他の特徴とかわかりますか?」
「サヤ
8月21日 14:51
―――――――
今ちょうど確認してました! そうです! 道の真ん中に二つへこみがあって、あとは、確かじゃないですけど、うっすらと巨大な足跡みたいなのと手の跡みたいなのがあったみたいで」
「足跡に手の跡……」
暗闇だったせいもあるし、無我夢中だったせいもあって、紙都の中では昨夜の出来事は夢を見ていたかのように曖昧だった。
それでも、朧気ながらその巨大な足跡と手の跡に付随する記憶は残っている。
紙都はその太い指をキーボードから離した。
「通りすがりの妖怪
8月21日 14:53
―――――――
なんだかあの妖怪が思い浮かびますね。確か…「足長手長」とか言う」
「足長手長!?」
紙都は、興奮のあまり思わず叫んでしまっていた。
その台詞と全く同じ文言が掲示板に投下される。
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