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「さて、儀式を再開するか」
紙都は地面に飛ばされた刀を拾うと、しばし刀身に自身の顔を照らした。横で覗き込む沙夜子の目にはその表情が微笑んでいるように思えた。
ふと、後ろから声がかけられる。
『紙都さん』
「あっ、電話のことすっかり忘れてたわ」
草原の上に放置されたディスプレイが明るく光る。
『私にはよくわかりませんが、あなたは百合と、私の命の恩人です。私、聞こえたんです! 最後に百合が「ありがとう」って言っているのを』
その報告は沙夜子の顔を綻ばせた。
「だってさ、紙都。よかったじゃない」
「……ああ、本当にな」
刀が横に払われ、赤い線が夜の中を走り抜けていった。
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