始マル

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私は少し明るくなってきた山道をくだる。 何時間も雪の振る夜に作業していたはずなのに私の足取りは極めて軽いものであった。 何故かは、知っている。 もうすぐ貴方様に逢えるからだ。 間違いない。 そうだ、私は貴方様のすぐ触れられる処まで居るのだ。 貴方様はお気が付きになられてはいないのだけれども。 「――鈍、感」 今も昔も其処だけは変わりませんね。 「――――――ッ」 嬉しさに打ち振るえ、背筋がぞわぞわする。 そんな幸福な感情をあざ笑うかのように私の視界にあの街が見えてきた。 私の両頬に張り付いていた靨が消え、心は軽蔑の気持ちに支配される 汚い街だ。 汚い人が闊歩する汚い街だ。 貴方様もそこの一部であることにすごく遺憾だと感じる。 「―――ふふ」 私があの汚い街に着けばいよいよハジマルノダ。 本当に永かった。 貴方様がいなくなり永遠のような時間を過ごした。 後少シ、後スコシ 実感し、再び私の足取りは軽くなる。雪は綿のように足にこびり付く土は足の一部となったように。 歩幅は行きとは明らかに広がっていた。
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