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私はお兄さんの去った方向を見つめ惚けています。
まだ頭にはお兄さんの手の温かさが残っている気がしました。
がしがしがし――。
私が惚けていると、先輩方が私の方に近づいてきます
「お水。あんた何やってんだい」
先輩のお姉さん方に鬼気と迫られてはいますが
私はなぜ怒られているのか事情がよく分かりません。
「冷や冷やしたよ、取りあえず気に入った人に声をかけな。とは言ったけどね流石に限度というものがあるわね」
「あ、あのどういうことでしょうか」
お姉さん方に当てられ恐縮してしまった私はおずおずと小さい声で反応する。
「・・・あんた、今の人知らないのかい?」
お姉さんは大量な溜め息をつく。
「むぅ。そんなに落胆しなくてもいいんじゃないですか」
なんて度胸のない私は言えるはずもなく
「――すみません」
と言うのが精一杯だった。
「うーん、お水あんた高崎という名は流石に聞いたことあるよね?」
「あ、はい」
高崎
この一帯を仕切る親玉のようで、この遊郭を全て管理していて。
私には良くは分からないけど私の努めている『牡丹』や他の遊郭もこの高崎さんのお陰で成り立っているって聞いたことがあります。
でも、なんでここで高崎の名が出たんでしょう?
私の表情が伝わったようで
「その様じゃ、まだあんたがしでかしたことね重大さが分かってないようだね」
やれやれと首を振る
「―――すみません」
「その高崎さんだよ今の人」
「へ」
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