トワイライト

11/17
前へ
/17ページ
次へ
「曾おじいちゃん許してくれたでしょ?」 ……曾おじいちゃん? この子は私のことを、曾おじいちゃんと言ったのか?そんなはずは……68年だ。彼女は再婚していると思っていたが。 そんなはずは……。 いきなり現れた制服姿に髪が茶色い少女と彼女を何度も見比べた。 彼女には少し似ているとは思うが私には似ていない気がする。 「わからないわ……和真さんが聞いていてくれれば良いわね……こればっかりはわからないわ」 少女の手を借り立ち上がる彼女に向かって早口で話しかける。 「もういいんだ。お互い様だ。私も君に伝えられなかったんだ。だから……もう!」 何とか私の言葉が届いて欲しい。 それだけだった。同じことを何回も何回も言い続けた。 でも、それも叶わぬ夢。 「おばあちゃん、曾おじいちゃんの名前これ?」 少女が、彫られている私の名前を見つけ指でなぞった。 「茜だめよ。むやみに触るものではないわ……日が暮れて来たわね。もう戻りましょう」 「はーい、あ……百合おばあちゃん!」 雲が沈みゆく太陽を隠している中、少女がやってきた道を小走りでかけて行く。 その先に手を振っている女性の姿が見えた。 .
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

283人が本棚に入れています
本棚に追加