トワイライト

12/17
前へ
/17ページ
次へ
「和真さん、私達の子の百合子と曾孫の茜です。あなたが戦死した知らせが届いた次の日にわかったの……孫は今日は仕事でこれなかったわ」 やはり私の子が?……。 死んでいるのにと自分でもわかってはいるが動揺は隠せない。 「君は本当に驚かせてくれる」 思いっきり声をあげて笑った。 そうだ、彼女はいつも私を驚かせてくれた。しっかりしていて、お茶目な一面を持っている彼女だからこそ惹かれた。 彼女となら怒ったり言い合いながらも、笑いながら幸せな人生をおくれるとわかっていたから。 「……また来ますね」 名残おしそうに手を合わせられる。 「もう行くのか……次はまた来年。寂しいな」 本音が口から出てしまう。 待っていたのは68年間。会えたのはほんの30分ほど。寂しさがこみ上げる。 「おばあちゃ~ん早く行こう。暗くなるよ」 少女が早くと彼女を呼ぶ。 「あの子は本当に落ち着きがないわね。誰に似て……ああ、和真さんに似てるわ。あなたも落ち着きがなかったから。それに、私のことを、おばあちゃんと呼ぶのも止めて欲しいわ……」 「それは聞き捨てならない。私はいつも君を楽しくさせようと必死だっただけだ。あの子のようにせわしなくはないよ」 「もう行くわ……」 風が吹き込み雲が流れていく。 すると、不思議なことに沈みゆく太陽の光とは反対にもう一つ、上りゆく白い月が私達を照らした。 .
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

283人が本棚に入れています
本棚に追加