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「違うの……あの時、私はあんなことを言いたかった訳ではないの……本当は本当は」
アスファルトに崩れるように座り込み、顔を手で覆い涙を流す彼女に伝えたい。
「わかっている。あの時に君が言いたかったことは私に伝わったよ。だから泣かないでくれ」
彼女の隣にしゃがみ込み何とか泣き止んで欲しいと話しかける。
「あなたに、こう言いたかったの……きみ……もうこと……なかれ――」
「君、死にたもうことなかれ」
アスファルトに彼女の涙が落ちシミをつくるが、またすぐに消えていく。
「君、死にたもうことなかれ!何度も何度も言おうとしたわ!あの時、あの瞬間伝えたかった、あなたに。帰ってきて欲しかった。周りがどう言おうと伝えたかったのに。私に勇気がなかった」
「もういい!終わったことだ。もう君が苦しむ必要はない。あの時、君が何を伝えたかったか感じていた。だから……もう良いんだよ」
頭をアスファルトの上にこすり付けるように懺悔する彼女を抱き起そうと肩に手をかける。
――だが、それは叶わぬ夢。
私の手は無慈悲にも、すっと彼女の肩をすり抜ける。
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