―前編―

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「あの、昨夜は本当にありがとうございました。助かりました。でも、どうしてちょうどよくうちに来て下さったんですか?」 「悲鳴が聞こえたから。……なんで、オレ……あそこで寝てたんだ?」 食べ終わった皿を押しやりながら、璃鈴が言った。 「覚えてないんですか?」 「オレ、酔うと記憶なくすから。仕事の後はいつも記憶ない」 「あ、そ、そうなんですか……」 あのキスを璃鈴が覚えていないということが、私は何となく寂しかった。 「あの、お仕事って……」 「ホスト」 予想通りの答えだった。 「じゃあ、毎日大変ですね」 「それよりアンタ、……名前なんだっけ?」 私が彼に名前を告げる。
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