殿が城主になった日。

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「綾女様……殿がお亡くなりになった事は変えられぬ事実にございます。いつまでも貴女が気落ちしていては、天に昇られた殿も安心してお休みになれませぬよ?」 嗚咽する綾女の頭を撫でながら、兼続は優しく諭す。 しかし…綾女は兼続の胸を力無く叩きながら首を横に振った。 “父上は死んでいない!”と言いたげに。 困り果てた兼続は、ポリポリと頬を掻いた。 キツく叱ってやればいいのかもしれないが、彼女に対し情が湧いてしまえば叱りつけることが出来ない。 それに、元より温厚の兼続に心が弱った綾女を叱りつけるなど到底無理だった。 「――…もうっ、いつまでウジウジしてんのよっ!顔を上げなさい、次期当主になるのよ!?あんたはっ」 そんな兼続を見かねてか、もう一人天守閣へとやってきた。
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