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「きゃ、これは!」
けたたましい電子音を目覚ましに、弓恵さんが意識を取り戻した。
「大丈夫ですから、下を見ないでくださいね。」
詐欺師みたいな事を言ってるな僕は。
この期に及んで大丈夫なんて気休め。
「宝田さん、火が火がもう!」
弓恵さんの位置ですら火が見えるのか。
「放して、宝田さんの腕が!!」
悲鳴に近い叫び。
最後は涙声になっていく。
僕の右腕は炎に包まれていた。
まだ布地が焼けきってはいないけど、時間の問題だろう。
「お願い、宝田さん、放して……。」
聞きません。
貴女の頼みでも。
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