1066人が本棚に入れています
本棚に追加
/370ページ
布を切る振動。
風で揺れる動きさえダイレクトに神経へ繋がっているみたいだ。
「早く切れて、お願いだから。」
悲痛な声で弓恵さんが布地を裂いていく。
「直接飛び降りないで、布を掴んで降りてください。」
僕の言葉が信じられないという表情で弓恵さんは上を見た。
「何を、言ってるんですか?出来る訳、ないじゃ、ないですか!」
しゃくり上げながら訴える。
「僕の今までを無駄にするつもりですか!」
何故、自分を痛めつけてきたか?
逃げ出したい気持ちを抑え、無理矢理心を奮い立たせて。
弓恵さんが無事に降りないなら全部が無意味な事だ!
最初のコメントを投稿しよう!