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「……これは僕のエゴ、それでも無事でいてください。」
届かない呟き。
届けない呟き。
どれだけ身を切り崩しても、貴女を泣かしている事に変わりはないのに。
「宝田さん、私は、嫌です。」
涙で頬を濡らして弓恵さんはカッターを布に立てた。
足場にした壁の縁。
掴んでいる指先が痺れて重力で容赦なく滑る。
堪えていたがギリギリと爪が割れ剥がれ始めた。
「ぅ、ぐっ。」
これじゃまるで拷問。
もう保てない。
「急いで!そして必ず掴んで着地するんだ!!」
ふっと足が軽くなる。
切れた!
「迷うな、掴め!!」
命令口調できつく怒鳴った。
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