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「私だけ無事でどうすればいいんです!?」
私だけ?
「宝田さんを犠牲にしたと言われて生きていられないですよ!」
生きていられない?
「起きて宝田さん!」
声が近くなる。
僕を呼ぶ声。
「最善の道をいつだって示してくれたじゃないですか!!」
混濁の世界から引き戻される。
「信じさせてください……。」
痛みの中。
1つだけ伝わった感覚。
握られた手。
泣きながら呼び続けているのは弓恵さん。
そう。
このまま死ねば最後まで不完全な男だ。
僕が相手の負担になるのなら。
助けた事にならない。
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