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この日の夕飯は、なんと言うか、いつもと雰囲気が違うような…うん、違う。いつもはワイワイ食べるのに。
沈黙を切り裂くように、お父さんが言う。
「麗。」
「ん?」
「俺は心配なんだ。おめえが一人でトカイに行くことが。」
「何で?」
「トカイは汚い所だ。特に男は、な。だから、
殺られるまえに、殺れ!
明日から、特訓開始!」
「えっ!」
口答えしようとした私を遮るように、お父さんが続けて言う。
「飯が冷めちまうべよ!早く食え!」
「……はい。」
ちょっとイラッと来たから、さっさと食べて、自室に駆け込む。
「可愛い一人娘が遠くに、ましてや男の所に行っちまうのが怖いんだよ、俺は。」
私の後ろ姿を見て、お父さんがポツリと言った言葉は、私には聞こえるハズもなかった。
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