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身近であり、信頼していた人間か
目尻に溢れる涙がゆっくりと伝う
胸が……軋むように痛くなった
……心千花
何故か名を呼びたくなった
泣き顔を見るのは初めてじゃない
だけど、こんなに切なげな泣き顔は見たくない
させたくない
手が勝手に動いていた
溢れ続ける涙に指先で触れる
拭っても拭っても後から後から溢れて
それでも何度でも僕は涙を拭い続けた
誰かに優しくしたことなんてない僕は、不器用に涙を拭うだけ
「心千花……」
声に出して呼んだ名は、何故か特別な響きを纏って
本当に僕が呼んだのか信じられない程、優しいものだった
「心千花…起きて」
もう泣かなくていい
ここには心千花を傷付けるモノはいないから
だから、早くその琥珀色の瞳で僕を見て
『バカ麿』って呼んでよ
心千花が起きたら、いつものように『じゃじゃ馬』って呼んであげるから
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