Act.1 神ヲ欺いて

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ーーびっくりさせてやろ。 俺はゆっくり背後から近づき、後ろ姿の姉貴を驚かせようとした、 その時ーー。 「……」 近づく足が思わず止まる。 俺の目に飛び込んできた光景……。 姉貴に近寄ってきた制服姿の男。 知り合いなのか楽しそうに2人は会話している。 俺が何より驚いたのは姉貴の表情だった。 頬は赤らみ、時折白い歯を見せて嬉しそうに話す姿。 それは俺の前で一度も見せたことがない顔だったのだ。 ーーズキン。 今まで感じたことのない痛み。 ギュッと胸を締め付けられるような痛みが俺を襲ってくる。 口から出る白い息。 俺は鼻をすすり目線を反らして、2人に背を向けた。 見たくなかった。 姉貴の嬉しそうな表情がやけに辛くなった。 その時、改めて思った。 俺は姉貴が好きなんだって。 ずっと胸の中にあった突っかかりみたいなモノがようやく取れて、 自分の気持ちに正直になれた気がした。 それから姉貴を“姉”ではなく1人の“女”として見るようになった。 俺の気持ちはもちろん姉貴は知らない。 叶う恋だとは思えない。 叶えたいと思っちゃいけない。 俺はただ姉貴の1番近くにいれたなら、それだけでいいんだ。
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