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ーーびっくりさせてやろ。
俺はゆっくり背後から近づき、後ろ姿の姉貴を驚かせようとした、
その時ーー。
「……」
近づく足が思わず止まる。
俺の目に飛び込んできた光景……。
姉貴に近寄ってきた制服姿の男。
知り合いなのか楽しそうに2人は会話している。
俺が何より驚いたのは姉貴の表情だった。
頬は赤らみ、時折白い歯を見せて嬉しそうに話す姿。
それは俺の前で一度も見せたことがない顔だったのだ。
ーーズキン。
今まで感じたことのない痛み。
ギュッと胸を締め付けられるような痛みが俺を襲ってくる。
口から出る白い息。
俺は鼻をすすり目線を反らして、2人に背を向けた。
見たくなかった。
姉貴の嬉しそうな表情がやけに辛くなった。
その時、改めて思った。
俺は姉貴が好きなんだって。
ずっと胸の中にあった突っかかりみたいなモノがようやく取れて、
自分の気持ちに正直になれた気がした。
それから姉貴を“姉”ではなく1人の“女”として見るようになった。
俺の気持ちはもちろん姉貴は知らない。
叶う恋だとは思えない。
叶えたいと思っちゃいけない。
俺はただ姉貴の1番近くにいれたなら、それだけでいいんだ。
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