9人が本棚に入れています
本棚に追加
いつの間にかコピーは終わっていて
コピー用紙は部員数分のプリントになっていた
私はそのプリントを綾芽に手渡してから
「はい、これは綾芽がもって行きなよ…秋月の所までさ」
「四季ちゃん…ありがとう」
その「ありがとう」は何に対してのありがとうだったのかは知らない
でもその言葉も胸に突き刺さった
「良いの良いの、私、ちょっと保健室行ってくるね」
「大丈夫?ついて行こうか?」
「平気、私は良いから早く行っておいでよ」
「うん…あっ、四季ちゃん」
ふと綾芽に呼び止められる
振り返ると綾芽は笑顔で
「もし四季ちゃんが男の子だったら、私は四季ちゃんに惚れてたと思うわ」
“男の子だったら”
「……ん、そうか」
それ以上の言葉はもう出てこなかった
それ以上は、聞きたくなかった…
皆の居るグラウンドに向かって歩いている頼りない背中
正面からぶつかれなかったその背中に向かって小さく
「好きだよ…」
と呟き
遅れて僕の頬を伝った雫が地面に落ちた
~END~
最初のコメントを投稿しよう!