双刀の剣豪

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街の中心まで歩いてきていた鞘(しょう)は、普段見慣れた昼間の景色とは違う夜の街をぼんやりと見回す。 中心といっても田舎の地方都市なので見渡す限り巨大ビルが立っている、などというわけでもない。 しかし、そんな地方都市であっても近年の発展は著しく、星の光を遮るように派手なネオンの看板がまたたき、街頭には全国チェーンの飲食店やブランドものの商品を売るような店などが当たり前のように並んでいる。 だがせっかく来てみたものの、彼が興味を引くものはほとんどない。 興味がない以上、道端で客の勧誘や宣伝をしている店員も、同世代の高校生たちのおしゃべりも同じくただの雑音だ。 今更になってなぜ街へ来たんだろう、なんてことを考えるが、何も考えずに来た以上、それを考えたところで答えは出なかった。 結局何をするわけでもなくそのまま帰ってしまおうかと思い始めたときだったーーーーー 「………、ーーーーーっ!?」 雑音が溢れかえる街の中に、明らかに場違いな空気が混ざっていることに鞘は気づいた。 それは鞘がいつも稽古をしている道場のような、静かだけれど緊張感のある空気に似ていた。 否、そんなレベルではない、道場のものよりもっと濃密で、体にまとわりつき息苦しさを感じさせる。 それは本来、この喧騒に溢れた平和な街には存在しないはずの異質な空気。 まるで一瞬で消えてしまう命と命のせめぎ合いのような静寂ーーーーー 関わらないほうがいいーーーーー 彼の本能がそう告げている。 しかし、同時に湧き出る思いがあったーーーーー ーーーーーそこに、自分を夜の街へと駆り立てた答えがあるのではないか。 気付けば鞘はその異様な空気の流れてくる方向に駆け出していた。
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