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深夜のコンビニ
荒い息遣い
規則正しい肉を打つ乾いた音と水音
赤いミュールが軋む
私はカウンターに突っ伏し、お兄さんが私に突っ伏している
着ていたシャツはいつの間にか床に落ちていた
さっきまでの優しい声とは違う低い雄の声が頭の上から落とされる
お兄さんの足元に落ちたジーパンとベルト
バックルが鳴いている
繋がったまま向き合ってキスをした
唾液とミントの味
曇ったメガネ
紅い頬
冷たい床の上でフィニッシュに向かう
お兄さんの首にしがみついた
果てる瞬間ミュールが脱げる
私の目尻から薄く涙が零れた
けれどそれはすぐに乾いて消えた
冷たかった床が温かくなっていた
私に被さり息を整えようとしているお兄さんの重みが心地いい
「ごめん…中に…」
「ピル飲んでるから」
重なり合ったまま言葉だけが往復する
むっくりと起き上がったお兄さんは髪がボサボサのまま、足元にあるジーパンのポケットから清潔感溢れる水色のタータンチェックのハンカチを取り出して、そっと私を拭き出した
額や首筋の汗
胸や腹の唾液
そして躊躇するようにとても優しく脚の間を拭いてくれた
まるで自分が壊れ物になったような気がした
誰かになにかしてもらうのは心地いいということを随分久しぶりに感じていた
「怖そうな彼氏に…怒られちゃうかな?」
拭き終わったらしくハンカチを握り締め、パンツも履かずうつむき正座しながら呟いていた
「バレたらね」
しばし逡巡してから床に落ちていた赤いパンティを慣れない手つきで履かせてくれた
そしてシャツを着せてくれた
手ぐしで髪を梳き乾いたはずの涙を拭ってくれた
立ち上がったお兄さんは自分の下半身が裸なのを思い出したように慌ててトランクスやジーパンを履く
またバックルが鳴いた
そしておもむろにジャスミンティーのペットボトルと缶ビールを持ってきた
ここはコンビニなんだと改めて気づいてなんだか笑えた
「どっち?」
ジャスミンティーを受け取り口をつける
「それ、好きなんだよね。いつも買っていくから」
お兄さんの声は雄の声じゃなくなっていて、少し寂しかった
「私誕生日なの」
自動ドアの前で振り向くとお兄さんは寂しそうな顔をして近づいてきた
「こんなものしかないけど…」
さっき見ていたシュシュを手渡してくれた
もらったシュシュでポニーテールを結ってアパートに向かう
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