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24年前の8月15日、私は生まれた
その日は驚くほど暑くて、ママはお昼ごはんのあとに食べたものを全て吐いた
そのとき力んだ拍子に私と外の世界を繋ぐ扉が開いたらしい
それから23年と364日
短くはなかったが、今となってはそんなに永くもなかった気もする
四年生大学を卒業後、決まっていたはずの内定は不況という名の嵐で初めから存在しなかったかのように吹き飛んだ
それでもなんとか父の口利きで近所のスーパーに就職した
就職なんていっても時給680円で1日に5時間、週3日しか入れない
教職を取った友達は月給20万だというのに…
ささくれ立った心に追い討ちをかけたのは大学の頃に2年間付き合ってた男、ケンだ
私が『まともな』仕事に就けなかったことを理由に、職場の上司で15歳年上の女と結婚したのだ
彼が就職した3ヶ月後にベッドの中で「結婚した」と言うまで、私は彼との将来を信じていたというのに…
あれから1年
彼とは月に1~2回会っている
未練はない
ただ身体の相性がいいのだ
コンビニで待ち合わせてホテルに行く
お菓子やお弁当を買ってから
大学の頃に彼の部屋でそうしたように、裸でベッドの上で食べるのだ
昨日もそうして彼と過ごした
「ミイ、明日誕生日だよな?」
「明後日だよ」
「あ、そっか…どっか行くの?」
「どっかって?」
「…デートとか?」
「知らない」
私の気のない返事にケンは戸惑った
自分は私を捨て結婚したというのに、私に男がいるのが気に食わないらしい
ケンが気にしているのはトシのことだろう
トシは4歳年上の職場に出入りしてる業者さんで、半年くらい続いてる
魚を卸してるだけあって、『生臭い』男だ
好きではないがわりと気に入っている
人間の『浅ましさ』みたいな本能を基準に考え行動している
私にはできない生き方だ
トシのことを考えているとケンが強引に手を伸ばしてきた
嫉妬心にまみれたそれは愛撫とは程遠いものだった
けれど私の雌は悦んだ
ケンとの力任せのセックスは好きだ
身体をぶつけ合って存在を確かめる
なんだか相撲みたい
必死に腰を打ちつけるケンがお相撲さんに見えた
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