二回~五回

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二回表裏、三回表裏、四回表裏と、両者無安打で迎えた五回表。 智弁和歌山の四番に対しての初球。 外へ外すはずのスライダーが甘く入る。 打者は見逃さず、バットを振る。 快音を残し、打球はセンターを越えていく。 懸命にセンターの加藤が追うが、その頭の上を越え、ボールはバウンドする。 バッターランナーは二塁を蹴る。 中越え三塁打。 この試合初めての得点機に、智弁和歌山は動いた。 長打を警戒し、深く守っている内野。 スクイズである。 能村が足を上げると共に、三塁ランナーが走る。 バッターはバント。 迷いはなかった。 キャッチャーの武川は ミットを低めに持ってくる。 能村は、武川を信じ投げ込む。 と同時に打球の処理のために走る。 バッターはバットを動かす。 バットは 空を切った。 フォーク。 ワンバウンドさせたのだった。 ランナーは慌てて戻ろうとする。 が、足を滑らせ三塁とホームの間に挟まれる。 武川がショートの宮田にトスし、宮田がランナーにタッチする。 「「「「「アウト」」」」」 球審が右手を高々と掲げる。 能村の顔に はじめて笑顔が浮かぶ。 結局、智弁和歌山はこの回ランナーを出すことが出来なかった。 その裏の盛岡東の攻撃。 四番武川の左中間への大きな当たり。 伸びて伸びて伸びて伸びて、フェンス際まで飛んだ。 が、俊足のセンターに追い付かれ、センターフライ。 盛岡東も、その後、ランナーを出すことが出来なかった。
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