97人が本棚に入れています
本棚に追加
「なあ、覗いてみない?」
そんな事を言い出したのは愚かにも友人A。
否、正真正銘のアホである。
こいつ、普段はヘラヘラしているクセに本当は幽霊や虫系といった類は苦手な正真正銘のチキン野郎なのに、何故に空気読めない事を言うのかね?
蜘蛛が大の苦手を理由に妹に退治してもらっているという秘密をクラス中に暴露してやろうか。
「ジャンケンで負けた奴が覗く事な!」
偉そうに言っているが、こいつ自身が負けた時どうするんだろうか。
俺は断固として宣言しよう。
こいつが負けた暁には、俺は全力を以て、奴が井戸を覗いた瞬間に、背中を蹴り上げると誓おう。
――結果。
「早く覗けよ玖珂! ビビってんのか? あぁん?」
自分が勝ったからって調子に乗る友人A。
この瞬間、俺と奴の友情に亀裂が走ったのは言うまでもない。
……しかし、勝負に負けたのは事実だ。
俺は後一歩前に踏み出せば、目の前にある井戸の中を覗ける所まで歩み寄っていた。
近付いて見てみると、やはり背筋が凍る雰囲気がある。
本当に貞子が出てきそうな予感に、正直に言ってしまえば足が竦んでしまいそうになる。
最初のコメントを投稿しよう!