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『…それで藤堂隊長は結局自分でバラしちゃって…』
『歳三から大目玉だろ!』
みんな時折涙を拭いながらでも終始楽しそうだった
俺は新撰組の知ってる話を全部した
ここの人達は新撰組を賊軍だとは思っていない
それに近藤先生に出稽古で剣術を習った百姓も沢山いた
『若先生は何で処刑されなきゃいけなかったんだろうなぁ』
誰かが呟いた
『近藤先生は…全てを抱えて逝かれたんだと…土方さんが仰っていました』
武士が腹を切るのは色々な意味があるらしい
でも俺達は武士の紛い物だと言われ続けた
近藤先生は武士だ
新撰組は本当に武士の集まりだったと
俺は知っている
『馬鹿ねぇ…男は』
静まりかえった部屋にミツさんの凛とした声が響いた
『腹を切ったって首を切ったって!!病気になったって!!弾に当たったって!!』
ミツさんはどこか沖田先生に似た自嘲気味の笑い顔をこっちに向けた
『死んじまったら一緒じゃないのよ!!!』
俺はなんて言っていいのかわからずにただ土方局長にもらった袴を握りしめた
『清太くんは偉いわ。生きてここに居るもの。奥方やご家族がいるお里に帰れるもの!手柄も出世も関係ないのよ!生きて…生きて生き抜いた人の勝ちなんだわ』
俺は軽く首を横に振った
『違うんですよ。先生達は誰より武士に憧れてた。そして誰より武士だった。ただ死んだんじゃない。勝ち残ったから生きてるんじゃない。』
俺はそこまでいって立ち上がった
『俺達には俺達にしかわからない事もあるんだろう。けど俺は生き残ったんじゃあねぇんだ!!!あの人達に生かされたんだ!!!見捨てられて殺された新撰組の中にいたのに!!俺は何度も助けられた!! 生き方も剣も!みんなあの人達から教わったんだ!!』
涙が流れないように少し上を向いた
『いくら沖田先生の姉上でもゆるさねぇ。あの人達は馬鹿じゃねぇ。』
そうだ
幕府のお偉方でもねぇ
ましてや城や俺達を捨てて隠れた将軍でもねぇ
国家や天下の話などわからなかった俺がただ唯一憧れたのは
剣を片手に血だらけになりながら必死に自分達の進む道を作ったあの人達だった
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