月夜

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『じゃあ待ってた私達はどうなるの?何年も夫や…父や…大切な人を待ってた私達はどうなるのよ!!生きて帰ってくるって信じていなかったらいられなかったわ!!そうしなければ…心が壊れてしまうから!!』 なんと言っていいかわからずに俺は所在なく部屋を見回した そこには小さな女の子が独り綺麗な女の人の膝に座って俺の顔を見上げていた 『かーさまぁ。とーさまはりっぱなおさむらいさまだったのでしょう?』 『そうですよ』 にっこり笑いあうその親子は近藤先生の奥方と娘だった 質素な着物と荒れた手は俺の里の百姓とかわらない 奥方の苦労が伺えた 『じゃあとーさまのお仲間のおさむらいさまもきっとりっぱなのね』 俺の顔を覗いて女の子は笑いかける 『おさむらいさま?泣いてはいけませんよ?おさむらいさまはりっぱなおさむらいさまなんだから。笑われてしまいますよ』 いつかみた事のある懐かしい晴れた空みたいな笑顔を見た 女の子は奥方似の美形なのに笑うと近藤先生みたいだった 俺は彼女の頭に手をのせて早くここを立ち去ろうと思った 俺がここにいることはこの人達にとってどんなに悲しい思い出を掘り出す事になるのだ
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