変客

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「ふーん?」って、普通に納得してくれた。 「じゃ、じゃあ、レジにどうぞ」 なにを慌ててるんだか分からないけど、足が勝手に早歩きする。 商品を袋に入れる前に割れ物だから包もうとしてたら、お客さんから待ったがかかった。 「その瓶は包まなくていいよ」 「へ?」 ズイッて手のひらを突き出されて、どうしたらいいのかワタワタする。 「瓶だけちょうだい」 一体何なの? 首を傾げつつオイルの瓶を手に乗せたけれど、お客さんはそれをポケットに入れるでもなく、ただ持っている。 「……それ持ってどうするんですか?」 子供がしてるのはよく見かける。 買ってもらったおもちゃを嬉しさのあまり握りしめて歩くってやつ? 「匂い嗅ぎながら帰ろうと思って」 「…………」 やっぱこの人、ヘン。 無言でオイルウォーマーだけ包んで袋に入れる。 受け取って帰っていくお客さんを、そのままレジから見送った。 「ありがとうございました」 ドアを開けたところで少し振り向いて、手をヒラヒラさせてから出ていく男性客。 う~ん。……掴み所のない人だ。
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