お引っ越し

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「なんか老人たちとゲートボールしてるって」 「はあ、何考えてるんだよ。大体ゲートボールって。いまどきの若者がやるか?ミスマッチだろ」 「まあ、それがあいつのいいとだから」 「お前、賢治のこと良くかばうよなあ。ホントは好きなんじゃないの」 「やめてくれよ。僕と賢治とはそういうんじゃないんだ」 「なんだなんだ。顔が赤くなってるぞ。そうか、お前はそっち側の人間か」 「違うよ!」 「ムキになるところがますます怪しい。違うって言うなら、そうだな、よーし、初恋の話してみろ」 「なんだよ、それ。無茶ぶりもいい所じゃないか」 「言えないんだな。俺は言えるぞ。  俺の初恋は、幼稚園と時で、相手は同じ組の桜ちゃんのお母さん」 「その時から熟女好きだったのか」 「ああ、俺の熟女好きはそこいらの奴とは年季が違うからな。綺麗だったぞ。桜ちゃんのお母さん。  由香さんて名前でな、岩手からこっちに越してきたらしくて、『そっちは危ながら、行ったらまいね』とか『どこさいくと、こっちにきんしゃい』みたいな方言で話すんだけどそれがまた魅力的でな。  そうそう一緒に花火を見に行ったんだよ」 「それは実際には桜ちゃんとだろ」 「その時の浴衣姿がまた、似合ってて、こうグッと来たんだよな」 「お前が幼稚園の時の話だよね」 「幼稚園の途中で引っ越しちゃってな、それ以来、音信不通。  それが俺の初恋の終わりだ。  ……って何語らせてんだよ」 「いや、お前が勝手に語ってたんだろ。とにかく僕と賢治はそんなんじゃないの。  って、賢治から電話だ」
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