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「ウォークマン。懐かしいな。あったあった、でも何で賢治の奴こんなところにウォークマン隠してるんだ」
「さあ、何でだろうね」
「……あれ、カセット入れるところに何か入ってるぞ。
――これはナイロン袋に入った白い粉……」
「こ、小麦粉か何かだよ。きっと、ひ、非常食なんじゃ、な、ないかな」
「そ、そうだよな。まさか、あれじゃないよな。こ、小麦粉か何かだよな」
「し、仕舞っておいた方が、い、いいんじゃないかな」
「そ、そうだよな。きちんと元の場所に――あっ!」
「ごほ、ごほ。何やってんだよ、破けちゃったじゃないか。吸いこんじゃったし、何か鼻水も出てきたし」
「ごほ、悪い、何か手に力が入り過ぎて……。あれ、何かぼーっとしてきた」
「大丈夫かよって。あれ、僕もなんだか……」
「なんだか気持いい気分だな」
「ああ、そうだな。あれ、囲炉裏のところで熊の着ぐるみが踊ってる。楽しそうだなー。僕も混ざろう」
「何言ってんだよ、囲炉裏のところにいるのは由香さんだよ。あれ、何で由香さんがいるのかな。俺に会いに来てくれたのかな……」
「違うよ、熊の着ぐるみだよ。ほら一緒にオクラホマミキサを踊ろうって手招きしてる……僕ちょっと行って踊ってくるよ」
「由香さん会いに来てくれたんだ。俺、ずっと由香さんのこと忘れられなくて……」
「ほら踊ろう。音楽も聞こえてきた。――っ痛、囲炉裏に躓いたのか。変な転び方したのかな。右手の指動かないや」
「由香さーん。俺ずっと、ずっと」
「お前どうした? なに言ってんの」
「そこに由香さんがいるんだよ。俺に会いに来てくれたんだ」
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