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?「いや……俺、武器とか防具とか買うために他のもん全部売ったんスよ……。だから、帰る場所も宿代も寝袋もないんで……ここでこっそり野宿させてもらおうと思ったんス」
軽く苦笑いをしながらそう言う訪問者
本来ならば武器や防具はそれほど高くはない。しかもこの訪問者が持ってるそれは明らかに安物。しかし、お人よしを絵に描いたような訪問者のことだ。おそらくぼったくられたのだろう……何の疑いもせず、何の疑問も持たず
冥王「……馬鹿だな、お前」
冥王は思わず口に出してしまった
?「あはは……生前もよく言われたっス」
冥王「本当に馬鹿だ。少しは人を疑うということを覚えろ。……人は他者を欺き、騙し、そして自分だけが助かるよう……己の欲望にのみ従って生きる生き物だ。その性質は魂にまで染み付き、人である限り決して変わりはしない……死して魂だけになっても、な」
?「でも……」
冥王「でも、じゃない。これは命令だ」
?「命令……?」
冥王「ああ。お前が人を疑うことを覚えるまで、お前には一切自由を与えない。この城に住み、僕にこき使われろ。……それが嫌ならさっさと人を疑うことを覚えるんだな」
そう言って冥王は自室へと戻った後ろから訪問者が何やら叫ぶ声が聞こえたが、冥王はそれを全て聞き流し「とっとと城内に入って適当な空き部屋で休め。さもないと痛い目を見ることになるぞ?」とだけ言った
何故、自分が今日会ったばかりの訪問者……しかも一時は勘違いとはいえ命を狙ってきた者にこんなことを言ったのかは冥王にもわからない
このお人よしを哀れんでいるのか、呆れているのか、それとも単なる気まぐれなのか……
……しかし、ここから着々と歯車は廻り始めていたのだ
冥王……ロキがこの言葉を発した、この瞬間から……
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