コンクリートの柱

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◆ (そんな!合田が……) 僕は突然のことに驚愕した。 頭痛がいっそうひどくなる。 まるで頭蓋骨に釘を打ちつけられているような気分だ。 僕のそんな事情などお構いなしに、テレビ画面の中で、キャスターが深刻そうな表情でニュースの続きを報道する。 被害者の名前は合田賢治。 T大学で准教授として超心理学を研究している。 キャスターはその死体の見つかった状況の異常さを視聴者に伝えている。 その死体は、電信柱の下敷きになっていたところを発見された。 画面が切り替わり、付近の住民の証言を流し始めた。 小太りな中年の女性が語っている。 「ほんと驚いた。突然、停電になったかと思ったら、大きな音がして――」 次に映った、顔にモザイクのかかったスーツ姿の男性が答える。 「いやあ、びっくりしましたね。何が原因かはっきりさせてほしいです」 画面はスタジオに戻り、相変わらず眉間に深い皺を刻んだキャスターの顔を映す。 「気象庁によりますと、当時周辺では竜巻や突風などといった現象は観測されていないとのことで、警察は原因不明とし、電柱の強度に問題はなかったか、人為的に引き起こされたものなのかなど、原因の究明を急いでいるとのことです」 そうしてニュースは締めくくられた。 (一体、どういうことだろう?) 側頭部に走る鋭い痛みに僕は顔をしかめた。 依然、僕は混乱したままだった。 一体、何が起きている? 考えれば考えるほど、痛みが頭に走る。 足をふらつかせながらシンクへ向かいコップに水を注ぎ、それを手に棚へ向かうと、僕は瓶から錠剤を取り出しそれをいくつか口の中に放り込み、奥歯でかみ砕いた。 間違った危険な服用法であることは承知しているが、噛み砕いたほうが効きめが早く、クセになっていた。 深呼吸すると口腔内に独特の薬品臭と強烈な苦みが広がった。 何度経験しても慣れない不快な匂いと味だ。 スチールの椅子に深く腰をおろし、まぶたを閉じて息を整えしばらく待つと、痛みが和らいできた。 僕はしばらく天井を仰ぎながら、今の状況について整理を始めた。
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