コンクリートの柱

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◇ どのくらい考え事をしていたのだろうか、テーブルの上のコーヒーはすっかり冷めてしまっていた。 試しに一口、口に含んでみるが、香りもすっかり逃げて、ただの黒くて苦いだけの液体に成り下がっている。 アイスコーヒーとホットコーヒーの冷めたものとでは、どうしてこうも違うものかといつも不思議に思う。 自分の舌を通して苦々しい感情が脳内に広がっていくようだった。 僕は合田の死に対して、ショックを受けていた。 そして自分がショックを受けていることに、驚いていた。 はっきり言って、僕は合田のこと嫌悪していた。 合田は僕たち兄弟そしてノドカたちが実験台にされていた、超能力研究所の主任研究員だった。 その研究員の中でも合田は特別厭な奴だった。 背が低く、その小柄な身体には不釣り合いな大きな頭。 まるで爬虫類を思わせる、ギョロリとした瞳。 その容姿から、僕たち被験者の中で“グレイ”のあだ名をつけられていた。 とにかく陰湿で野心をむき出しにしているような男だった。 研究所の子供たちを、ただの実験道具としてしかみていない。 プライドが高く、自分の思うような結果がでないと、実験の子供たちに辛く当たる。 合田という男は、そんな人間だった。
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