コンクリートの柱

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僕は、とにかく合田のあの目が生理的に受け付けなかった。 冷たくじめっとした、他人を蔑むような瞳を向けられる度に、心の内がささくれ立つような気分になった。 そんな男の死に衝撃を受けている自分に、僕は動揺していた。 どうして合田は殺されたのだろう――。 そこでまた、ハッと気付く。 殺されたと決まったわけではない。 むしろ、状況から考えるに不幸な事故に巻き込まれたと考えるのが自然だ。 何らかの原因で電柱が倒れ、その下敷きになった。 僕は目を閉じ想像する。 コンクリートで作られた太い柱の下敷きになった、合田の死体。 その柱の陰から覗く生気を失ったギョロリとした合田の瞳を思い浮かべて、僕は全身に鳥肌が立った。 それにしても、電柱が倒れた原因とはなんなのだろうか。 もったいないと思いながらも、冷めきったコーヒーを流しに捨てながら僕は考えた。 車が衝突しても、車の方が壊れるくらい頑丈なものだ。 気象庁は突風などはなかったとしているし、当然地震も発生していない。 重機などで人為的に倒したとしても、ならば周囲の住民が音で気付いているはずだ。 どれだけ考えてみても結局何も思いつかない。 電柱自身の経年劣化。 施工時のミス。 そういった類によって引き起こされた悲劇。 このときはまだ、そんな風に呑気に考えていた。
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