コンクリートの柱

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気付くとカオリは冷蔵庫から牛乳を取り出し、ガラスのコップに注いでいた。 「それ飲んだら、さっさとシャワーでも浴びて来い」 カオリは腰に手を当てて、豪快に牛乳を飲み干す。 「そういえばさ、合田のこと覚えてる?」 僕はカオリに聞いてみた。 さきほどカオリが扇風機の前で出した宇宙人のような声で、合田のことを思い出していた。 彼はその容姿からグレイのあだ名で呼ばれていた。 「合田?……うーん?誰だっけ?」 カオリは腰に手を当てたまま、首を傾げた。 「ほら、研究所の研究員でさ、ほらあの……グレイだよ」 「あー!思い出した!アイツか~!」 「うん、その合田が死んだって」 「えええー!ウソ!?なんで~!」 テーブルがガタンと大きな音を立てる。 彼女は驚いた勢いで、テーブルに身を乗り出すような形で両手を思い切り叩きつけた。 カオリは自然と前かがみの姿勢になり、スポーツブラの隙間から胸の谷間が覗く。 いくら古い付き合いだからといっても、流石に無防備にもほどがある。 僕はどぎまぎしながら、目を逸らし言った。 「早くシャワーを浴びて来いって!」 「なによぉ、自分から話題を振っといて……」 「いいから、シャワーをだな……」 「もう、そんなに急かしてあたしをどうするつ・も・り?」 僕は思い切りカオリを睨んだ。 「ぶーぅ、怖いんだからぁ……」 そういうとカオリは渋々風呂場へと姿を消した。 「……はあ」 僕は、安堵とも呆れともとれる深いため息を肺の奥から吐きだすのであった。
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