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息がくるしい。
走っているのだから当たり前なのだが、できればこうはなりたくなかった。
ああ、あそこで奈津子さんに捕まらなければ。
今更後悔しても遅いのだが。
次第にスピードの落ちてくる渚の横をベルを鳴らしながら一台の自転車が通り過ぎ、一メートル程先で止まった。
金髪の活発そうな少年が渚を振り返る。
「何死にそうな顔して走ってんだ?」
「千佳(ちか)ちゃん!お願い、私も乗せていって」
「知ってるか?今の時代って二人乗り禁止らしいぜ?」
渚の幼なじみの内の一人である西条千佳はそう言うと、悪い笑みを浮かべながら去っていった。
「奴に呪いあれ!」
「僕達に幸あれ!」
「……」
遠ざかって行く千佳に叫ぶと背後から返事がきた。
振り返るとやはり奴がいる。
祐希は息切れした様子もなく、余裕の表情で電信柱の影から此方を見ていた。
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